スポーツ障害
肩関節痛・その発生から治療まで
通常日々の臨床で遭遇する「肩の痛み」は様々な原因による症例が存在します。
例えば、いわゆる「五十肩」「腱板炎」「上腕から肩甲帯の損傷に伴う長期固定による筋の萎縮」など。
一方、習慣性脱臼やthrowing shoulder やswimming shoulderに代表されるover useに伴う「腱板不全」による「不安定肩」タイプ。
これら両タイプは、しばしば同一の病名や同一の訓練で処理されており「遷延治癒」や「機能不全発生」の原因となっています。
☆stiff shoulder と loose shoulder
「stiff shoulder」の定義
外傷以外の発生機転すなわち 「over use」や「退行性病変」を発症の基盤とし、肩甲上腕関節のみならず肩甲胸郭関節でも自他動ともに動きの制限を受けているもので、骨性の制限がないものとする。
「loose shoulder」の定義
肩関節の安定機構
○静的安定機構
組織の受動的働きにより「関節」が安定される機構(関節包・靭帯・関節唇・関節内圧等)
○動的安定機構
筋の能動的収縮により、関節が安定化される機構で特に rotator cuff(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)をさす。
stiff shoulder 発生におけるrotatar cuff の作用
1983年にNeerは第二肩関節での通過障害が腱板断裂のおもな原因であるとし、その病態を3つのSTAGEに分類し腱板炎・肩包下滑液包炎・impingement−lesionの概念を提唱した。
第二関節の通過障害とは、特に『棘上筋腱』が肩峰の下面及び烏口肩峰靭帯が作るアーチの間で、上肢挙上時に衝突し、こすれた時に発生する障害のこと。
「innner muscle」という言葉は、特に野球界でよく聞かれ、その反対を「outermuscle」と呼んでいる。
肩の内部の小筋群(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)がinner muscleであり、外側の三角筋・大胸筋・広背筋等がouter muscleである。
スポーツによる肩の障害・反復性脱臼・亜脱臼・いわゆる五十肩まで、肩障害のあるほとんどの症例は、この「inner muscle」と「outer muscle」のバランスの破綻が生じている
(田畑興介さん《NPO法人JPAA研究会理事長》の論文より引用)
習慣性肩関節脱臼(肩関節不安定症)
「肩」の脱臼を繰り返すと「わずかの力で肩がはずれてしまう」ようになることもあり、スポーツだけでなく、日常生活でも障害になる事があります。
一旦『脱臼』が起こり、支えている筋肉や腱や袋が伸びきってしまいますと「整復」された後でも、前方の組織の支えが効かず、弱い力でも『脱臼』してしまいます。
整形外科では、スポーツを続けられる人には「手術」が勧められます。
1)プチプラット法
肩関節の前方にある関節の「袋」と「腱」のゆるんだ「部分」を縫合し、安定させる方法。
《利点》金属などの異物を使用しない為、本来の「筋」「腱」の形をほとんど変化させない。
《欠点》骨自体に欠損がある場合には、そこの修復が出来ない。
外旋(腕の外開き)の角度制限。
2)バンカート法
肩関節の「骨」からはがれた関節の「袋」の部分を「骨」に密着させる方法。
密着させる為に「ボルト」を使用。
1)の方法と併用する場合もあり。
《利点》身体への侵襲が少ない
《欠点》安定化は不充分
3)ブリストウ法
肩の前方に腱(上腕ニ頭筋腱)を移行させ固定
《利点》手術後の角度制限が少ない。
《欠点》スクリューを使用する為、この緩みや折損などの発生がみられる。
4)関節鏡手術
2)の方法を関節鏡により行う方法。
スポーツ活動をあまありしない場合や「亜脱臼」を繰り返す場合など有効
《利点》傷がほとんど目立たない。
《欠点》脱臼の再発生率が他の方法に比べて高い。
Exercise
☆関節可動域の拡大を目標としたROM exercise
○急性期(炎症期)の症例に対しては、炎症軽減を目的とした安静を促す肢位や日常生活上の留意点について指導。
○亜急性期〜慢性期
関節mobilisationやAKAが有効。