腰痛の治療方法
ここでは腰痛の治療方法をお話ししましょう。
「痛み」が続くようであれば、まず「診断」を受けましょう。
整形外科に行けば、まず「レントゲン」。その後「CT」(コンピューター断層撮影法)とか「MRI」(磁気共鳴画像診断法)などのほか、「ラジオアイソト-プ」などの画像診断をしてくれるはずです。
脊椎骨の管の中にある神経も多様なネットワークパターンである為に、腰の痛みや下肢のしびれをおこしている原因がどこにあるかの決定はとてもむつかしかったのですが、「MRI」検査によってそれらは改善され、治療法も著しい進歩が見られるようになりました。
痛みのコントロールを行う為の方法として低出力レーザーや、電磁波を用いる光線療法が出現しました。
神経や椎間関節の炎症性の痛みに対し、麻酔薬やステロイドホルモンを注入して、痛みを遮断するブロック療法も成果をあげています。
この注入はX線透視下でおこなわれるのが確実で良い方法とされています。直接椎間関節に針先があたるまでカテラン針を刺入し、局所麻剤を1〜2cc注入するという方法です。
この麻酔剤の注入により患者の訴える疼痛が緩解されれば、その椎間関節にステロイドを注入します。これらの方法は原因療法ではないので痛みが治まったというに過ぎず、痛みをおこした、その身体のしくみを変更させるというものではありません。激痛の苦しみを取り去るという手段としては、早く効果をあげるという意味です。
「ぎっくり腰」などでは、痛みの激しい時期に数日間、自宅で安静にしているだけで自然に改善される例が多くみられます。又、「腰椎椎間板ヘルニア」の中にも自然にヘルニアが縮小する例がたくさんあります。病院に運ばれ《MRI検査》などで、大きなヘルニアが発見されても一ヶ月位の自宅安静で治ってしまう人も多いのです。
その間の保存療法は、積極的な安静、疼痛に対する「鎮痛剤」「座薬」などの使用。ストレッチを中心とした運動療法。
入院して持続骨盤牽引。腰椎の「装具療法」「ブロック療法」などがあります。
この保存療法を数ヶ月行っても疼痛のとれない人や、神経麻痺症状のある場合は「手術」の対象となります。
◎腰痛で手術を必用とする場合
@腰椎椎間板ヘルニア
手術しなければ治らないと言いきる医師もいる程ポピュラーな疾患で、ヘルニア部分の母髄核の摘出術です。
A腰椎分離症・分離すべり症
スポーツ少年に見られる病態ですが、運動時の腰痛だけの事が多く、活動を停止すればもとにもどります。「分離固定術」「椎間固定術」が行なわれます。
B腰椎変性すべり症
これは、中年以後の女性に多く、歩行時の腰痛、下肢痛などですが、安静時であっても症状のある時には手術する事があります。
C腰部脊柱菅狭窄症
これは、中年以後60歳前後の男性に多く、歩行困難となり、手術の適応。
D炎症性疾患
化膿性脊椎炎というのは、一般細菌(黄色ブドウ球菌)によるものと、脊椎カリエスという「結核菌」によるものがありますが、いずれも耐え難い激しい腰痛と発熱があります。
初期には、抗生物質の投与による保存的な治療を行いますが、麻痺的な症状が出た場合には、病巣掻爬とか、脊椎固定術が行なわれているようです。
最近は又、「結核性感染症」が増加してきているようです。
E腫瘍性疾患
MRI検査などで発見されることが多くなったものに「馬尾腫瘍」というのがあります。これは「腫瘍」が持続的に増大してゆくので、手術する方向となっています。
ウイリアムズの腰痛体操
「腰痛体操」として知られているウイリアムズ(PaulC.Williams,M.D)は、アメリカ合衆国テキサス洲ダラス出身の整形外科医で、腰痛症の保存的な療法の権威として、数々の業績を残しています。
六種類の体操で、不良姿勢の原因となる「腰椎前彎」の増強と「骨盤前傾」を、腰仙部の屈筋強化により矯正しようとする事にあります。この体操は「基本」ですが、痛みの程度で「方法」が違ったり、禁止動作も含まれていますので、適切な指導を受ける事が、必用条件です。
@は腹筋強化。
Aは臀筋強化。
Bは(下左はし)脊柱伸筋・腰仙部筋膜靭帯の伸展。
Cはハムストリング伸展。
Dは大腿前面の伸展。腕立て伏せで主として「大腿筋膜張筋」や「腸骨大腿靭帯」を伸展。
Eは、踵をあげずに。これにより大腿四頭筋を強化し、ものを拾う時に前傾しないで、膝を曲げてしゃがむことを覚えるというものです。
腰痛対策
「腰痛」についていろいろ述べましたが、参考になりましたでしょうか?
厚生省の統計によりますと、「腰痛」の治療を受けている人口は三十三万八千人と発表されています。これは「病院」を訪れて、医師の診断を受けた人数であって「軽症」や慢性の腰痛で苦しむ人や、他の医療、たとえば「整骨院」「鍼灸院」「カイロプラクテイック」「マッサージ」などの「治療」を加えると十人に一人の人達が、常に「腰痛」と無縁でないともいわれています。
二足歩行獲得と引き換えに「腰痛」を獲得したわけですが、四六時中「痛み」と付合っている人ばかりではなく、病名を付けられた人でさえ「痛み」を忘れている時が多々みられます。「腰痛」を感じた時、自分自身の生活を振り返って見て下さい。「痛める」要素があるなら、それを取り除く努力をしてみて下さい。
それでもなおかつ「痛み」が治まらない時、専門医又は「整骨院」「鍼灸院」などで指導を受けて下さい。
一度「指導」を受けると「目安」になる場合が多いですヨ!
たかが「腰痛」と思わず、自分の身体を理解し、いたわり、健やかな日々を送って下さい。
そうすれば「腰痛」は必ず治ります。
最後に「東洋医学的」には『腰は腎の府』であるとしていますので、腰痛と腎の関係は極めて密接に関係していると考えています。
例えば、住居が湿気が多いとか、寒冷であるとか、長時間に「水」「雨」などに冒された場合とか、衣類が湿って冷たい条件下にあり「寒」「湿」の邪気が体内に留着し、腰の府を犯すと気血の運行が悪くなり、「腰痛」を発生させるというものです。
外邪は「寒」「湿」ですが、それを受け入れた身体のほうに問題があり「脾」「肝」「腎」のバランスの乱れとしています。
MRI検査では、今の瞬間を細胞単位で「映像化」する事に成功しましたが、「腰痛」は1枚の「映像」で説明できるような簡単なものではありません、自分自身の経過をさぐり、これからどうするかは自分自身でしかないのです。
今後も、皆様のお役にたてれば幸いと思っております。
取合えず 終わり としましょう。